「彼女の絵は景色に馴染むんだよね」
大通りから一本裏手に佇む厳かな数寄屋建築。知る人ぞ知る茶道文化の要地として、今日も茶道を学ぶ人々がここに集う国の指定有形文化財・神谷柏露軒。
江戸中期の書を象った文字の彫り飾りや掛け軸など、脈々と伝統を受け継ぐ重厚な設えの中にあっても、若干25歳の彼女の作品は空間を崩すことがない。
普段若い女の子たちが眺めては「かわいい」と言われている彼女の絵は、迫力満点の仏像や数百年前の書の文字と非常に相性良く置かれていた。
「この絵は仏像を前に置いたりしても面白いんだよ。ほら、いいでしょう。」と見せてもらうと、確かに不思議な相性の良さがある。
一枚の中に水面のような静けさと、大胆かつ繊細な筆跡という、静と動がある伊藤理乃作品。20代の若い女性から年配の紳士まで、年代を問わず受け入れられる、彼女の絵の底力を感じた。
ITORINO × 茶室 2024 「陽」
➖神谷柏露軒
名古屋市・中区 国の指定有形文化財にも指定されている数寄屋建築。広間茶室の柏蔭斎、容膝、大炉の間からなる主棟に、相伴席付一畳台目茶室磑亭を附属する。裏千家茶道の学びやとしても日々多くの人が集う場所だ。
➖ITO RINO
岐阜県生まれ/愛知県立芸術大学美術学部 美術科油絵専攻卒業 愛知県立芸術大学美術研究科 修了 油彩絵具をまるでクリームのように盛り描く独特の画風が特徴的。自然素材をモチーフに淡く美しい色合いの作品が支持されている。